異業種からの参入で小さな飲食店をやってるけど何か質問ある?小さな飲食店主の経営幼稚園

これから飲食店を始めたい方や既に小さい飲食店のオーナーをされてる方に役立つかもしれない情報を書いていきます。

飲食店の独立開業で覚悟しておくこと

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      2015/11/03

飲食店の独立開業をするにあたって「覚悟しておくこと」がいくつかあります。

こんな事言いたくありませんが、楽しいばっかりじゃないです(笑)

これから始める人は現実を知るという意味でも、以下を覚悟しておきましょう。

社長になるということ

良くも悪くも、飲食店とはいえお店を経営するという事は社長になるということです。
当然取引先の担当者からは「社長!」と呼ばれますが、僕は実績も何も残していない状態でそんな事を言われても恥ずかしかっただけなのを覚えています。

さて、社長になるとどんな覚悟が必要かを書いていきます。

毎年確定申告をしなければならない

毎年の年度末には確定申告が必要です。

あなたのお店がいくら売り上げて、いくら経費を使ったから、いくらの利益が残ったのかを税務署に届け出なければならないんです。
もちろん経理担当者を雇うなり、税理士に頼むなりして仕事の軽減は可能ですが、必ず毎年申告する必要があります。
それによって翌年の所得税(法人なら事業税)が決まってきます。
所得税が決まると住民税が決まってきます。

消費税を納めなければならない

開始から2年間は実質上消費税を気にする必要がありませんが、2年前の売上高が1,000万円を超えていた場合には本年の売上に係る預かり消費税を税務署に収めなければなりません。

(例)2013年度の売上が年間1,300万円だった場合、2015年度の売上が年間で900万円だったとしても、そのうち67万円ぐらいはお客さんから預かっている消費税なので、納税する必要がある。
※厳密には家賃や食材を買う際に払っている消費税分があるので、もう少し減額されます

住民税や年金、国民健康保険、雇用保険などを自分で支払わなければならない

僕はこれが一番ショックが大きかった事項です。

会社から貰える給与明細にはいちいち書いてありますよね、この辺の項目が。
あれって、会社側が代わりに納めてくれていたり、負担してくれていたりするものだったんですが、その負担が全部自分に来るというわけなんです。

個人事業主なら国民年金で自分の分だけ払えばいいだけですが、法人化して社員を厚生年金に加入させようものなら、その社員の年金支払い額の半分をあなたが負担する事になるわけですから、これも大きいですよね。

とくに住民税や国民年金は前年度の収入に対してかかってくるものなので、開業した年の売上がどれだけ低くとも前年の給与が大きければ容赦なく請求が来ます。
請求を無視し続けると督促が来ます。
(厳密には無視しなくても、払う意志を示しても督促がきます。(笑))

従業員との考え方の格差

前述の通り、会社側は給与を支払う際に諸々負担することになるのですが、受け取る側はそんなこと知ったこっちゃありません。なので、考え方に格差が出てきます。

例えば「給料25万円」という条件で雇用した社員が、給与明細を見た時に「住民税や社会保険引かれて、結局手取り21万円じゃねーか!」って思うとするじゃないですか。でもあなたからしてみたら「厚生年金は半分こちらが払ってるわけだし、雇用保険にも入ってるし、他の税金も代わりに手続してるんだから月に29万円ぐらいは彼に費やしているよな」って思っているかもしれない。

その差8万円です。

そりゃー「25万円と言われてしっかり働いたのに実質は21万しか貰ってない」と社員はブーたれるかもしれませんし、社長であるあなたからしたら「29万もかけてるのに21万円の働きしかしていない」と不満を持つかもしれないってわけです。

友達が少なくなる

同様に、友達との考え方にも格差が出てきます。

今まではみんな仕事をすれば自動でお給料が入ってきて、休みの日はそのお金で遊んだり着飾ったりした仲だった友達。
ハンバーガーチェーンを見て「あんなに不味いのに、あそこ行くやつの気がしれないよなー」とか言っていれば成り立っていた関係です。
それが自分でお店を始めると「なんで美味しくないのに流行るんだろう・・・」という疑問から、「美味しくなくても流行る店なんてすごいぞ・・・!!!」という感動に変わってくるんです。

でも、それを友達に話しても決して理解はしてくれません。
それは友達が馬鹿なのではなく、その世界を体験していないから知る事ができないんです。

ホンダの創業者である本田宗一郎氏の有名な言葉で

人生は見たり聞いたり、試したりの3つの知恵でまとまっているが、

多くの人は見たり聞いたりばかりで一番重要な、「試したり」をほとんどしない

というものがあります。
人は人から話を聞いたり、それを見たりする事で知った気になってしまうのですが、「試したり」という要素も含めての「知恵」だとおっしゃっているわけです。
つまり実際に行動して初めて“情報”が“知識”になるわけなんですね。

あなたがいくら「情報」を流しても、その友達の「知識」にはならず、自然とその考え方に格差が生まれてしまい、最終的には「一緒にいても居心地のよくない仲」になってしまう可能性が大いにあります。

休みがなくなる

「社長になると休みなんてなくなる」とよく言われています。

実際には定休日を自分で作れるので、自由に休めます。
が、本質はそこではありません。

休みの日に家族と出かけて、昼食に入った飲食店の店構えからメニュー構成、接客、料理・・・と全てが気になるようになります。

それだけではなく、テレビで芸人が面白おかしく話していた内容が自分のお店にいかせるんじゃないかとか、マンガの主人公の発言からヒントを得られたりとか、とにかく何でもかんでもヒントになりそうで神経を尖らせることになりがちです。

そうならない為にも「今日は完全にオフ!仕事のことは絶対に何があっても考えない!!」と決める日を作る必要がありますね。

病気になっても保証がない

これは一番覚悟しておくべき部分です。
しかも、夫婦で始めようとか、とにかく「自分がお店に立つ」と思っている人は要注意。

風邪を引いても、腰痛が酷くなっても、なんだったら事故にあっても大病を患っても、

休んだら休んだ分だけ収入が入ってきません。

会社員は制度に守られています。
自由に取れなくとも有給があります。休んでも給与が保証されます。
産休や育休のような福利厚生があったりもします。

でも、社長(または個人事業主)はそんな制度ありません。
ないからには、作るしかないんです。
でもそんな制度を作ると言う事は、自分の利益を犠牲にするという事です。

※やむを得ない事故などの場合には事前に「休業特約」のついたPL保険に加入しておくなどで回避する事も可能です。

健康診断などは自分で管理

「じゃあ病気になれないね!」なんて言っても、その予防だったり検査をしておく制度もありません。
今までは会社で年に一度健康診断がありましたよね。
正直面倒だったけど業務を一日さぼれるならいいかーといやいや行っていた健康診断。
今度は自分の体を守る為に、自分で申し込んで自分で行かなければ誰もやってくれません。
※もちろん行かなくてもOKです。

健康診断でも1万円前後、人間ドッグなら数万円が飛んでいきます。
会社は健康保険の組合に入っていたりするのでその補助があったりしましたが、個人では自分で加入しない限りそんな補助も受けられません。

その代わりに得られるのは、自由と楽しさ、無限の可能性

社長は以上のような事を、特に「社長だからこういうことやってるんだぜ。大変だろう?」なんて顔せず、涼しい顔で飄々と乗り越えていっています。

それはその代わりに得られる物を知っているからかもしれません。

自分で選択できる自由

色々と大変な覚悟が必要な代わりに、まずは「自由」を手に入れられます。

何時に起きても自由。何時に出社しても自由。
仕事をするのもしないのも自由。

何を売るのも自由だし、自店のルールを決めるのも自分次第です。

ただし!

忘れてはいけないのは、お客さんありきだということ。
つまり、お客さんがダメと言えば、ダメなんです。

僕は会社員時代に、上司や取引先の人に縛り付けられて不自由な想いをしていました。
だから、飲食店を開業できた時に「これからは自由だ!!」と思いました(笑)

が、蓋をあけてみたら、今まで上司や取引先だった人達が「お客さん」に変わってしまったんです。

なので、売りたい物もルールも自由だけれど、押さえつける人がいない自由ではないという覚悟は必要ですね。

楽しさは自分次第

一番のメリットは「楽しい」という事かもしれません。

経営をすることは命がけではありますが、人生という名のRPG(ロールプレイングゲーム)をしている感覚に近いと思います。

自分で模索して、色々試して、失敗しては経験値を積んで、レベルがあがれば強い敵を倒せるようになる。

サラリーマンの人生は言ってみれば「補助輪のついた自転車」のようなもの。
転ぶ可能性は少ないけれど、爽快感に欠ける。
でもあなたは補助輪を外して動きだした自転車みたいなものです。
ロードバイクにだってマウンテンバイクにだって乗れるんです。楽しいですよね。

上で「休めなくなる」なんて書きましたが、休むことよりも楽しい事が待っています。

きっとこの楽しさがわかる人じゃなかったら飲食店の経営なんて楽しめないかもしれないです。

無限の可能性

よく普通の人生を送ることを「レールの上を走る人生」と例えますが、レールの上を走っている以上はレールが存在している場所までしか行く事ができません。
運良く誰かがレールを作ってくれれば世界の秘境まで行けるかもしれませんが、確証はありません。

自分から動き出したあなたはレールのない道をあれこれ探索する事ができます。
もちろん確証はありませんが、自分の足で世界の秘境を目指すことだってできます。

つまり、目の前には無限の可能性が広がっているわけです。

終わりに

価値観は人それぞれなので、僕は何が正しいとか正しくないとかの議論は意味がないと思っています。

だから、決してレールの上を走る人生が退屈なわけでもないし、無限の可能性に賭ける人生がバカだとも思いません。
(一度きりの人生なので、誰かに迷惑をかけてしまったとしても楽しく生きる方がいいんじゃないかなとは思います)

なので、飲食店を独立開業すると決めた人には、上記に書いたようなことは覚悟しつつ、楽しい人生を送って欲しいなと思います。

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