メニューの価格の決め方 | 原価から決めてはいけない
2018/04/25
飲食店の食材原価は3割と言われてきました。
近年は食材の価格が高騰していますから、3割ではきかないお店さんも多いです。
これから出店しようと思う方は特に、メニューの価格設定に悩むのではないかと思います。
その時に「原価から決める」という事はあまりオススメしません。
なぜなら、それは「お客さん目線」じゃないからです。
Contents
原価から決めるのはお客さん目線じゃない!?
原価に合わせて価格を決めるのは、一見お客さん目線風。
「安く仕入れられた材料で作った料理だから安く提供します」なんて言えばもっともらしく聞こえます。
でもこれ、実は真逆だったりします。
お客さん目線でもなんでもないということ。
原価から決めるというのは例えば、
原材料費が200円のアーリオオリオ・ペペロンチーノをいくらにしようか・・・?
原価3割に抑えたいから、200÷0.3=666.6666・・・円
端数を切って、670円。
みたいな感じです。
これって全然お客さん目線じゃなくて、単に「店側の都合で価格を決めている」という事がわかりますでしょうか。
お店が「3割に抑えたい」という理由で、
”お客さんの利用シーンやお客さんの気持ちも考えずに決めた値段”なんです。
お客さんは、満足さえすれば、原価が1割だったとしても基本的には問題ありません。
こういう事をいうと「ぼったくりだ!」とか言う輩がいますが、そんなのは無視していいんです。
その証拠に、僕は僕が通っているお店の料理の原価なんて知らないですし。
ただ単純に、その店に支払っているお金と受け取っているサービスのバランスに満足していれば、原価なんて関係ないんです。
自分が思うよりもう少し強気で
じゃあどうやって価格を決めたらいいのかというと、
それはやっぱり「お客さんの利用シーンにあわせて」という事になります。
あなたが、あなたのお店を利用したいお客さんを想像して、
そのお客さんがあなたのお店の料理を食べる姿を想像して、
そこにいくらの価値を感じてくれるかを想像するしかありません。
もし、あなたのお店がイタリアンレストランだったとして、
あなたのお店を利用するお客さんに、
「サイゼリヤみたいに安くて気軽で家族でいける美味しいお店」
として来店して欲しいのであれば、原価に関わらず、サイゼリヤと競って勝てる価格でなければダメですよね。
でも、
「彼女とデートするのにちょうどいい、街のイタリアンレストラン」
なんだったら、たとえ200円の原価だったとしてもパスタ一皿1,000円ぐらいの価格設定だと思います。
だってあまりに安いお店だったら、デートなのにカッコつかないじゃないですか。
小さな個人の飲食店なら、自分が思うよりも少しだけ強気な値段設定をしてみてください。
お客さんが小さな個人の飲食店に求めている事を考えればわかるはずです。
あなたが強気の価格設定にすれば、あなた自身や従業員にとってプレッシャーにもなりますし、自然とサービスの質もあがってきます。
大切なのは「お客さんの気持ちを想像すること」です。
安く設定すれば安い店になる
お客さんの気持ちを想像しろと言うと「お客さんは値段が安ければ安いに越したことはない」と考える料理人の方も多いと思います。
でもこれは、お客さんを舐めすぎじゃないでしょうか。
というか、世界を知らなさすぎです。
世の中の男性は、まだまだデートの時に格好つけたいと思っている人が多いんですよ。
僕はこれは男性の美学だと感じていますし、そこに乗ってくれる女性もワビサビのような物があって素敵ですよね。
そういう格好つけたい時に、安い店って選ばないと思いませんか?
だから初めての大切なデートであればあるほど、サイゼリヤは選ばれにくくなります。
これは、美味しいとか美味しくないとかではなくて、格好つけたいから。
そしてそんな時に気になるのは、原価率が2割かどうかではありません。
そのお店の雰囲気がどうかとか、料理の盛り付けが綺麗かとか・・・
要は「彼女が総合的に満足するかどうか」なんです。
そういう時って、どちらかというと
「高ければ高いほうがいい」
という状態にもなり得るわけです。
わかりますか??
高ければ高いほうがいいこともある!?
飲食以外でもありますよね。
簡単な話だと、宝石なんかがそうです。
そのダイヤには「本当はいくらの価値があるのか」なんてことは問題ではなくて、「いくらのダイヤをプレゼントして貰えたのか」ってことの方が価値がある・・・ということ。
こういう時って、同じ価値の物をできるだけ安く買ってプレゼントしてほしいんじゃなくて、高ければ高いほどいいわけです。
ただ、これはもちろん、シーンや人によります。
彼女が「安くてボリュームある店以外には興味がない人」なんだとしたら、そんな人をあなたのお店に連れてきちゃった彼氏さんに問題があるわけですw
だからこそ、「あなたのお店がいったいどんな人に使って欲しいのか」を想像して価格を決める必要があるんですね。
安くすればしただけ、安い物を求めるお客さんが集まりますし、店の価値が安くなります。
そういうお客さんを求めるのであれば、逆に原価率3割では高いかもしれません。
もし安さで勝負したいんだったら徹底的に、「俺のフレンチ」に負けないぐらい原価を安くしなかったら魅力にならないでしょう。
価格を決める時のテクニック
僕はテクニック論は後回しでいいと思うのですが、ついでに書いておきます。
あくまで「安い」というメリットを売りにしたテクニックなので、興味があるひとだけ。
例えば1,000円に設定しようと思うメニューがあるのなら、
これを990円のようにするとお客さんの気持ちが若干ゆるみます。
心理的に、一桁下がったように感じてお得に思うんですね。
たった10円の差でも1,000円と990円のメニューだったら990円のメニューの方がよく出ますよ。
応用としては1,000円に×をして赤文字で990円って書くとかでも「なんかお得っぽい」って感じは演出できます。
意味のわからない値下げですけどねw
マックのクーポンとかがこんな感じです。
僕はそもそも値下げってあんまり好きじゃないのでオススメしませんが、一応こんな方法もあるよ、という紹介でした。
あとは目玉商品(絶対食べて欲しい商品とか)の価格を少しだけ高くすると、なんとなく価値が高まってより人気が出たりとかもあります。
価格って難しいですねw
おわりに
最後に・・・こんなことを言うと反感を買うかもしれませんが、
お客さんって結構お店に信頼を寄せてくれているところがあって、価格が高いとそれだけで「これはいいものなんだ」と思ってくれたりするんですよ。
僕のお店でも、原価が極端に安いものを、ありえない価格で提供したことがあります。
でも「このお店で出してくれるんだから、いいものなんでしょ」って、常連さんはみんなオーダーしてくれたわけです。
人によっては「お客さんを騙している」と感じるかもしれません。
でも、僕らが売っている物って、単なる「調理された料理」だけじゃないと思うんです。
いわば夢を売っているというか、
あなたのお店に期待して来た人に価値を売っている感じなんです。
・・・わかりづらいですよね。
例えばお客さんが感じる満足っていうのは、
「シャトーブリアン180gが1,000円で食べられた」
みたいなことばっかりじゃないということ。
もっと
「今日はいい気持ちで食事が出来た」
みたいな部分も考えてあげてほしいというか・・・
そういう部分をプロデュースするのが飲食店の使命だと思うんですよね。
ただ単純に美味しい料理を食べるだけだったら、
高級な食材を買って、料理の本でも見ながら家で作った方が絶対に安上がりですし。
極端な話、食べても飲んでもすぐに寝られるって、家での食事が最強ですよ。
飲食店って、そんな最強の敵「家での食事」に勝たないといけないわけじゃないですか。
「家で食事するよりも値段は張るけど、あのお店に行きたい!」
って思ってもらう必要があるわけです。
原価200円のパスタを1,000円で出していたら「あのお店に行きたい!」とは思って貰えませんでしょうか?
僕だったら、デートに使いたいと思う店で600円のパスタを出す方がお客さんの期待を裏切っている可能性があるのではないかと思ってしまいます。
まぁ・・・何が正しいかはわかりませんけどね。
あなたのお店のお客さんの事を先に考えれば見えてくる事があるのは事実です。
なので、そのターゲットとなるお客さんにとって、正しい価格設定を考えてみてください。
・・・でもデートにアーリオオリオはちょっとアレだったかなw
例え話ってことで。
-
-
飲食店を経営する時の原価率はいくらぐらいがいいのか
飲食店を経営する時に切っても切り離せないコストの1つが、「食材原価」です。 いっ …
Comment
検索からぶらりと入ってきました。
自分は新しいダイニングのメニューの価格設定に悩んでいるところでした。
今までやっていた店舗と全くコンセプトの違う店なのでとても参考になりました。
ありがとうございます!
てんちょさま
コメントありがとうございます!
返信が遅くなりました。
価格設定、難しいですよね・・・。
お役に立てたのなら幸いです!新しいダイニングも繁盛しますように!