飲食店主の取引先との価格交渉は値下げ以外の事に利用しろ!
酒屋さんとの取引で、何度となく「もうちょっと安くなんないですか?」って交渉した事があると思います。
酒屋さんももちろん最初からギリギリの価格なんて出してきませんから、
交渉して下げた価格が妥当なような気がしてしまいますが、最近ちょっと違うんじゃないかと思うところがあったので書いておきます。
値下げ交渉をもっと効果的な事に使うということ
もし、値引き交渉によって下げてもらった価格が、
例えばビール一本あたり50円だった場合。
月間で500本ビールが出た場合には500本×50円=25,000円浮いた事になります。
たった25,000円と考える方がいるかもしれませんが、馬鹿にできない金額です。
でももし、この25,000円の代わりに、
その酒屋さんが誰かを連れて飲みに来てくれたらどうでしょう?
つまり「値段の勉強してくれなくていいんで、月に一回飲みに来てくれません?」って交渉してみるということです。
もし飲み代が一人あたり5,000円だったとして、2人で来てくれたら10,000円。
4人で来てくれたら20,000円です。
原価4割と考えて粗利が12,000円。
普通に考えたらビールを値引きしてもらった方が13,000円も得していると考えられます。
・・でも本当にそうでしょうか?
月に一度、必ず予約が入っているイメージ
僕はどちらかというと、”ギリギリまで値引きをしてもらう事”は、目の前の事しか考えていないんじゃないかと思いました。
お店の将来像を考えた時に、
「出来る限り安く仕入れた材料で経営するお店」なのか、それとも
「人でにぎわっているお店」なのかで言えば、後者です。
(あくまでどちらかと言われたら)
ビールを値引きしてもらう事は、それだけでは”お客さんが来てくれること”には繋がりません。
仕入れ値が安くなって得をするのは、自分の利鞘が増える部分だけ。
もしくは仕入れ値を安くした分、売価を安くすれば集客に繋がるかもしれませんが、
その場合にはビールだけでなく他の食材の価格も下がっていなければ意味がないです。
また、急な価格高騰があった際に、客離れを引き起こしかねません。
価格で勝負するというやり方は、難しいです。
いつ、何が起きようとも一番安くなければいけないわけですから、
マクドナルドのような本当のプロになって初めてやれることです。
※マクドナルドですら失敗してますからね、今は。
それに対して、「その代わり毎月飲みに来てくれませんか?」だったら、
あなたのお店は必ず毎月その人が一回は来てくれる予約が取れている状態です。
価格が高くなろうとも、そのお店と取引している以上は来てくれるわけ。
人は、人が集まるお店に集まります。
だったら、閑古鳥が鳴いているお店よりも、いつでも誰かがいるお店の方が絶対にいいわけです。
しかもその方が友達を連れてきてくれたら、それはもう広告宣伝みたいなもの。
下手な広告宣伝費を使うより、実際にお店に来て体験してくれる方が何倍も価値があります。
商売の基本はWin-Win-Win
僕がこの考えに至った時に思ったのが、
「取引先に値下げを要求することはWin-Win-Winにならない」と思ったから。
商売の基本はWin-Win-Winです。
あなたも、お客さんも、取引先も全員がいい気分にならないとおかしい。
誰かが嫌だなと思っていたらダメなんです。
なんだったらそこに「地域」とか「近所の飲食店」とかも入ってきて、
Win-Win-Win-Win-Winとかになると、もうあなたのお店は”必要とされている”状態ですから安泰じゃないですか。
取引先にギリギリまで価格を下げさせていた僕の場合、
お客さんには普通の価格で出してましたから、お客さんはWinではないし、
安い価格で提供しなければならない酒屋さんもWinじゃない。
結局僕だけがWinになる形を作ってしまっていたというわけです。
もし「値下げしなくていいんで、月に一度でいいから飲みに来てくれませんか?」を実行していたら、
酒屋さんはたかだか月に1回ほど飲みに行くだけで、月間25,000円もの値引きをしないで済んだわけですし、なんだったら月に1回「飲む理由」が出来て嬉しいじゃないですか。
さらに言えば、酒屋さんは”あなたのお店の美味しい料理”が食べられるんだから言うことなし。
あなたはあなたで、1円も損せずに広告宣伝が出来るわけだからWinです。
酒屋さんが必ず来てくれるし、もし誰か連れてきてくれるならラッキーです。
そしてお客さんも、にぎわっているお店が演出されることに繋がったら、楽しく食事が出来る事にも繋がりますからWinというわけ。
さらにさらに、それでお客さんがバンバン入ってお酒が売れて行けば、
酒屋さんはもっと嬉しいですよね。
商売をやる以上は、こういった先の事にまで目を向けて行かなければいけないのではないかと思っています。
おわりに
酒屋さんだけでなく、すべての取引先にこういった交渉が出来たら、もっといい感じになりますよね。
ただ今はどこも不況ですから、
「月に1回なんて飲みに行けないよ」
なんて事にもなり兼ねないので注意が必要です。
もし酒屋さんが飲みにきてくれなくても、
酒屋さんの知り合いにクーポンを渡してもらうとかでも効果的ですよね。
仕入れる金額を安くすることに目を向けすぎないで、
そういった部分に係る人に協力してもらってでもお客さんを増やすことが生き残るためには必要だと思います。
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