ドトールのコーヒーが安いのは、誰が価値を感じてくれるのかを知っているから
先日、クラウドワークスの副社長がコーヒーの価格の低さを問題として挙げ、日本が東南アジア的に貧乏だと発言したことが話題になっています。
[参考]「日本は本当に貧乏」クラウドワークス副社長のツイートが話題に コーヒー200円台は「東南アジア的になってる」 | キャリコネニュース
実際のツイッターでの発言は以下。
久々のドトール。さすがに200円台はびっくり。
海外行って痛感するのは、
「本当に日本は貧乏」
ということ。この質と価格は世界水準では全く合ってない
日本はもう、過去の東南アジア的になってますね
資本主義自体も再考の余地があるが、その中での日本の位置付けも再考の余地が大いにある。
— 成田修造(Shuzo Narita) (@shuzonarita) 2018年5月5日
この件に関して、「低賃金で働くことを促しているクラウドワークスが言うな」とか「ドトールのコーヒーはマズイ」とか、はたまた日本は貧乏じゃないとか、東南アジアが貧乏じゃないとか・・・いろいろな意見がありますが、僕ら飲食店の経営者が見るべきポイントはそこではないと思っています。
僕らが考えなければいけないのは、「ドトールは誰に訴求しているの?」というところだと思います。
ドトールのコーヒーが200円なのは安いのか?
ドトールでコーヒーが200円で飲める・・・というのが安いか否か、というのは価格だけでは決められません。
たしかにそこらの喫茶店で提供される1,000円近いコーヒーに比べたら、品質も悪くなく1/5の価格なので安いです。
でも、当然のことながら家で淹れるインスタントコーヒーの方が間違いなく安いですよね。
最近はインスタントコーヒーだってクオリティが上がっているので、ドトールで飲むものに負けないものもあると思います。
それでもドトールに200円を落としてコーヒーを買っている人は誰なのか?
どんな人がこの価格とサービスの質に対してちょうどいいと思っているのか・・・そこに注目すると見えてくることがあるのです。
価値は人によって異なる
件の副社長は今回ドトールに対して「こんなに素晴らしいサービス、素晴らしいクオリティのコーヒーを200円で提供するなんて・・・!!安すぎる!!」と感じたわけです。
こう感じるのは何も不思議なことではないですし、僕もあの立地とかを考慮して「これで黒字出せてんのかよ、すげえ!!!」とは思います。
※それを安直に「日本って貧乏だ」としてしまったので問題になったんでしょうけど・・・。
ただ、正直言って・・・僕はドトールのコーヒーには200円も払いたくないと思ってる側の人間だったりします。
コーヒーのクオリティやサービスの質という部分では本当にすごいと思うんですが、お店の雰囲気とかタバコ臭さだとか・・・そういった(僕にとっての)マイナス要素が強すぎるから。
だったらスタバとかタリーズとかに500円払った方が何倍も安いと感じてしまいます。
もちろんこれは逆に感じる人もいますよね。
雰囲気が嫌い、タバコが吸えない、なんかユーザーがみんな気取ってる・・・みたいな理由でスタバが嫌いという人にしてみたら、件の副社長のように「ドトールがすごい!!!」となるでしょう。
つまり、価値は人によって異なるということなんです。
ドトールはそこに価値を感じられる人に向けて訴求しており、その方向への企業努力の結果として200円のコーヒーを実現しています。
そう考えると「なぜ200円なのか?」という背景には、「そのサービスやコーヒーの品質に200円で満足する人」をターゲッティングした・・・ということが挙げられるのではないでしょうか。
ターゲットが変われば訴求も変わる
有名なエスニックジョークの1つに、沈没しそうな船のお話があるのをご存知でしょうか。
以下のようなものです。
様々な民族の人が乗った豪華客船が沈没しそうになる。それぞれの乗客を海に飛び込ませるには、どのように声をかければいいか?
アメリカ人に「今飛び込めばあなたは英雄ですよ」
ロシア人に「海に落ちたウォッカの瓶はあなたのものです」
イタリア人に「美女たちも泳いでいますよ」
フランス人に「決して海には飛び込まないでください」
ドイツ人に「規則ですから飛び込んでください」
イングランド人に「イングランドが優勝しました」
スコットランド人に「スコットランドがイングランドに勝利しました」
中国人に「金塊が沈んでいるそうですよ」
日本人に「みなさん飛び込んでいますよ」
要するに、各国の人にこう声掛けをすればみんな海に飛び込む・・・ということを意味しています。
これが実際の国民性を表しているかどうかというのは判断に難しいところですが、少なくとも日本人の「みなさん飛び込んでいますよ」は頷けるのではないでしょうか。
たとえばこれが1つずつ、国とかける言葉がズレていたら・・・?
誰も飛び込まないとは言いませんが、なんとなく「はぁ・・・?」となりそうな感じがしますよね。
これはたとえ話なので、実際には僕だって「金塊が沈んでいる」で飛び込んでしまうかもしれません。
何が言いたいのかというと、その国の人一人ひとりに合った、適切な言葉というのがあるということ。
要するにこれ、ターゲッティングの話なんです。
この話自体はマーケティングの解説でもよくつかわれていて、同じ商品だったとしても市場が変われば「同じ売り方では売れない」ということが裏付けられています。
簡単な例でいうと、アニメ「ワンピース」のキャラクターが口に咥えているタバコが、他所の国ではキャンディに描きかえられている・・・など。
日本で流行っているからって、そのまま海外でも受け入れられると思ったら大間違いなんですね。
価値を与えるには相手を知ることが必要
もうここまで書いた内容でわかるとおり、相手に価値を感じさせるためにはその相手を知らないといけません。
ターゲットのことを知らなければ、訴求ポイントは作れないわけです。
今回の件でいうと、ドトールはそれをよくわかっていたということ。
欧米諸国に倣って品質も価格も高いコーヒーショップを求めている人はターゲットにしておらず、逆に「コーヒーには200円ぐらいしか出せないけれど通ってくれる人」のことをしっかりと考えて、知って、それで店づくりをしていった・・・ということなんでしょう。
さて、まわりくどくなりましたが・・・、あなたはあなたのお店に来たいと思っているターゲットのことをどこまで知っていますでしょうか。
あなたのお店にどんなサービスや品質、雰囲気を求め、そこにいくら出してどんな満足をし、そのことを友人たちにどう伝えるのか。
それは決して「安くて美味しい店」というだけではないハズです。
おわりに
・・・と言っても、ターゲッティングっていうのが本当に難しいんですけどね。
一番簡単なのは「自分が客として自分の店に来たら・・・」というのを考えることでしょう。
その時に「自分の月給が仮にこれぐらいとして、いくらぐらい貯金して、自由になるお金が月にこれぐらいあって・・・」という感じで構わないと思います。
月給まで自分ベースにしちゃうと色々とおかしなことになるからw
しかしまぁ・・・日本の飲食店の価格崩壊(サービスの品質に対しての価格)は僕らが一番痛感しているところですよね。
ドトールしかり、サイゼリヤしかり・・・大きなところが軒並み「安くていいサービス」を打ち出しちゃうので、無闇に単価だけあげる・・・ってことはできないですし。
かといってサービスの品質を価格適正に落としてしまえば途端に満足度も下がりそうですしね。
最近「おしぼり」の提供を辞めているお店さんが多く、世界標準はさておき、現時点での日本において「大丈夫かなぁ・・・?」と思ってしまいます。
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